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この言葉は、嶽本野ばら氏の作品「カフェー小品集」からの引用です。
なぜ、この言葉を本日のエントリーの題名にしたのかというと、 先日から、何通か就職活動についてのお話でメールをいただいており、 ごくたまに自分の就活体験記を掲載しても良いのでは?という想いに至ったからです。 私自身、新卒採用の就職活動に成功したかと問われれば、ノーと答えます。 しかし、あの時期を通して学んだことは多かったように思いますし、 自分の持っていた夢と就職とが結びつかなかった、という経験をしております。 就職活動の時期を過ごす中で、「自分のやりたいことは何だろう?」とか、 「自分が今やるべきことは何だろう?」と、悩む方も多いはず。 私も例に漏れず、そうでした。 そしてその悩みは、大学卒業をしてからも当分続きました。 今日のエントリーは、メッセージと言えるほど大した体験談ではありませんが、 これも一つの話として、片耳に挟んでいただければ幸いかと存じます。 * 私が就活で最初に試験を受けたのは、某キー局のアナウンサー試験でした。 別にアナウンサーを志望していた訳でもなく、 “試験慣れするため”に、という軽い気持ちで申し込んだら、書類を通過。 そのまま東京まで、実技試験を受けに行くことになりました。 初めての就職試験で、緊張しっ放し…という状態で受付を済ませると、 多くの受験者たちが待つ会議室へと通されました。 室内を見回すと、何かのオーディションか?と訊きたくなるほどのイケメン(?)揃い。 女性ならば、並みのホストクラブより上質なフェロモン空間(怪しい空間ですよね?あれ)を 感じたであろう場所で、生憎空気に飲まれて気後れしてしまった私は、 居心地悪く指示された座席に腰を下ろしました。 試験が開始されるまでにしたことと言えば、 隣の受験者の受験票をちらりと覗き見て、学歴を調べたりすることくらい。 (今でも覚えていますが、 左隣は、ある大学の放送学科の学生。 右隣は、東京の超有名大学の出身者でした) 何とかして緊張を解こうとすればするほど、不安だけが募り、 焦りや苛立ちばかりが沸き起こりました。 そして、開始時刻がやってきて、実技試験を受けるために会場を移動し、 渡された原稿を詰まり詰まり読み上げました。 “いつもテレビで観ていたアナウンサーがちょうど面接官だった” ということを覚えているぐらいで、 実際、どんな質疑応答をしたのかは、今になっても思い出せません。 それが、私の最初の試験の想い出です。 もちろん縁は無く、数日後、落選の結果をメールで受け取りました。 ただ、その日の試験で一番印象に残ったのは、 私の隣に座っていた放送学科の青年が、実技試験で披露したアナウンス技術でした。 彼は、お世辞にも外見が優れているようでもなく、 私は彼の荒れた肌を見て「無理だろうな…」と自分のことを棚に上げ、 勝手に心の中で決め付けていました。 (アナウンサーはテレビ局の顔になるのですから、 少なからずアイドル的要素というか、外見のイメージの良い人が有利になるだろう、 という偏見もあったかと思います。どちらにしても、失礼な話ではありますが) しかし、彼の技術は、本当に素晴らしかった。 部屋を去る間際に隣のブースから聞こえてきた彼の実況アナウンスを、 今でも私は覚えています。 容姿とか関係無い、とそのとき私は心の底から想いました。 流暢に流れ出る文言、そして、メリハリ感のある巧みな抑揚。 原稿の題材は恐らく、水泳か何かの世界選手権だったと思いますが、 彼の発するアナウンスから、スポーツ選手らがどんな風に競っているのか、 鮮明に脳裏に浮かんできたのです。 私は正直、完敗したと思いました。 私は帰りの新幹線の中で、試験に落ちるであろう結果よりも、 ずっと彼に負けたことを悔んでいました。 * 数年後、出会った嶽本野ばら氏の著作「カフェー小品集」の中に、 「夢は叶わない。あるのは常に目標だと」という言葉がありました。 ああ、彼の姿は、まさにそれを表現していたのではないか?と想い出すに至り、 私は当時の就職試験のことを振り返りました。 そして私が、いかに情けない学生だったのか思い知りました。 彼の中で、アナウンサーになることは、夢ではなく目標だったのでしょう。 彼はそのために何年も時間を費やし、 アナウンサーになるためだけに努力し続けていたのかもしれません。 私は、中途半端な努力しかしない人間には、当然の結果しか訪れないと知ったとき、 社会に出る以上、何かを獲得するための覚悟と貪欲さが必要だと思いました。 私が最初の試験で学んだのは、そのことです。 理屈ではなく、自分が選ぶ道で生きることへの覚悟が有るか否か。 その有無が、社会に出るための第一歩なのかもしれません。 自分自身の意志を曲げねばならないときも多々ありますし、 時には、極端な選択を迫られることもあるでしょう。 ただ、そこで勝つために必要な気概は、 やはり覚悟した人間にしか得られないものです。 残念ながら、当時の私にはありませんでした。 (社会人になった今でも、よく感じるのは、 成功する人は、大抵気概と覚悟が黙っていても伝わってきますね) * 先日、私が試験を受けた某キー局のHPを見ました。 アナウンサー紹介の欄に、彼の名前も顔写真もありませんでした。 しかし、彼は、この日本のどこかで、 きっとマスコミ職についているのだろうと私は思います。 私と彼は知人というわけではありませんが、 彼が後悔の無いよう、道を選択しているのだろうということだけは、 何年経っても不思議と予感が沸いてくるのです。 * 大人になると、こういう青臭い話は情けなさ過ぎて恥ずかしくなります。 でも、昔味わった恥ずかしい想いは、いつか笑える日が来るものですね。 (自分で読み返してみても、照れ臭過ぎて、笑って誤魔化すしかありません)。 就職活動で悩んでいるみなさんは、 少々の失敗にもメゲず、頑張ってください。 私は何ら、成功のためのアドバイスはできませんが、 今頑張っている人たちを、応援したいと思います。
by katefactory
| 2005-03-17 19:31
| 雑記
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