Metro-Mens.com
雑記「Don't call me, Henry」
 
2005年 03月 19日 ( 1 )
メトロセクシュアル(metrosexual)
[ English Here(英語版はこちらに) ]

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私はこのブログを書き始める前に、
“否定的・非建設的なエントリーをしない”ということを決めていました。
しかし、本日は、その誓いを破ることといたしましょう。
というのも、世間の流行を眺めていて、
「メトロセクシュアル」という言葉が示す本質的な意味を理解せぬまま、
その言葉のイメージが独り歩きしているような印象を否めなくなったからです。

そこで今回は、私なりの「メトロセクシュアル」について、本音で書き記したいと思います。

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メトロセクシャル 【metrosexual】の定義は、
『若くて高収入で都市部に住み、女性的ファッション-センスや文化的趣味をもつ
 (異性愛者の)男性。エステに通う男性など。近年アメリカで,
 新しい市場層として注目されている。メトロセクシュアル。
〔作家のマーク=シンプソン(Mark Simpson)による造語。
 都市住民(メトロポリタン)と異性愛者(ヘテロセクシュアル)の合成語。
 同性愛者(ホモセクシュアル)に加えて異性愛者も女性的な文化嗜好(しこう)を」
 持ち始めたことから〕』(三省堂提供「デイリー 新語辞典」より)。

つまり意訳すれば、「女性的嗜好性を持つ異性愛者の男性」ということでしょう。

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私は化粧品業界に身を置く人間ですので、よく「メトロセクシュアル」という言葉を耳にします。
しかし、ここで言う「メトロセクシュアル」というのは、
“美意識の高い人=優良顧客になり得る可能性が高い人”を指します。
その付属的オプションとして、地位がある人は金銭的余裕もあるだろう、とか
“アーリーアダプター”となってくれる可能性の高い点に魅力を見い出します。

(※アーリーアダプター【early adapters】。
 先駆的生活者(新しもの好き)ともいうことができる人たちで、
 流行などに敏感に反応し我先に反応する人たちのことを指す。
 時代の先端でいたいという意識が高く、創造的先駆者(イノベーター)の動きに敏感。
 イノベーターの影響を受け、それを真っ先に取り入れてフォロワーに伝達する結節点として
 大きな影響力を持っている。口コミなどの発生源となりやすい。
 アーリーアダプターマーケティングなどという手法も考案されている。
 [ マーケティング・販売用語集より ])

確かに、今までスキンケアの習慣が浸透していなかった日本人男性のライフスタイルに、
化粧品を巧みに導入させていく火付け役としては、彼ら以上の存在はいないでしょう。
彼らは使い、認めることにより、周囲に啓蒙する。
メトロセクシュアルが、その点で期待値の高い存在であるという理由は、
彼らが女性的嗜好を持っている(=化粧品に対して抵抗感が少ない)ということと、
彼らという人種が、お喋りで見栄っ張りで、
“自分が持っていて、他のみんなが持っていないであろう”情報を、
周囲に発信しやすいステレオタイプの人間だからなのです。
(アイドルなら、代理人や媒体が情報を発信しますが、
普通の一般人なら、自分で行いますよね。ブログもその一つでしょうか)。

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話を戻しますと、メトロセクシュアルという人種は、一言で言えばナルシストです。
彼らは、自分の人生を“豊か”にすることにとても貪欲になりますし、
それがいかに“高尚であるかを競う”という、哀しい習性を持っています。

よくテレビや雑誌で「まわりの人間に、もっとお洒落をしようぜ!」と、
コメントしている街の若者たちを見かけませんか?
「私は、○○(ブランド名)の△△△(商品名)が好きですね」と、
ダンディな写真とともにコメントを掲載している紳士を、見かけることがあるでしょう。

彼らは、まさに「メトロセクシュアル」として、わかりやすいタイプの人種です。
自分の人生が豊かになることを追い求めつつ、周囲とは一線を引き、
自分自身の人生が豊かになったことを高尚のものとして語る人間たち。

彼らは自分たちが豊かであるために、自分の頭に高性能のアンテナを立てて、
世の中の新しい情報を敏感にキャッチ。
いくらか自分の嗜好に添って選別するものの、巧みにそれを受け入れていきます。

私は仕事柄、メトロセクシュアルに属するであろう男性にお会いすることがありますが、
彼らに、自分自身のライフスタイルについて尋ねると、
10代の少女のように喜んでぺちゃくちゃと喋り続け、十二分の返答を返してくれますよ。
“口コミ”は、決まって彼らが「メトロセクシュアル」であるために必要なアビリティのようです。

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一方。昨今の、日本でのメトロセクシュアル的な男性のイメージは、
「お洒落で知的で、かっこいい男性」に尽きていますね。
肌に気を遣っていたりすることを条件の一つにしていたり、
知性溢れる会話ができることが必要であったり、
着る物一つにしても、洗練されたものでなくてはならないようなプレッシャーを与えています。

しかし私が思うに、巷で騒がれている「メトロセクシュアル」像は、
一時代前の「高身長 高学歴 高収入(いわゆる3K)」が
21世紀風にアレンジされて取り入れられたものであって、
男性の目指す理想的イメージの一つに過ぎません。
決して、讃えたり、持て囃(はや)したりすべきものではないと私は思うのです。

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日本で吹聴されている「メトロセクシュアル」のイメージは、
あくまで「ドラマの主人公であれ」ということでは?
キムタクであったり、妻夫木聡であったり、ブラピであったり。
彼らの理想像は、その地位から引き摺り下ろすもの(モデル的なもの)を排除し、
憧れという心理へのアプローチとして、「メトロセクシュアル」を仕立て上げようとしています。

しかし、私は、メトロセクシュアルであるためには、
余計なものを排除して純化することではなく、
さまざまなものを受け入れ、新しい価値観を生み出すことが必要だと考えます。
根本には、そういったポジティヴな動きがあるからこそ、
メンズコスメが受け入れられようとしているのですから。
しかし、条件と影響・メリットとの間にある温度差は厄介で、
昨今の一人歩きしているイメージや偏見の原因は、そこにあると私は思っています。

選別することは、選ばれる人間のロイヤルティを高めます。
しかしその逆も然りです。

このままハードルを高めたまま「メトロセクシュアル」という言葉が走り続ければ、
トレンド・リーダーになる前に、一ブームの恩恵を授かるのみで、
あとはマイノリティーの人種として、目立たず生きていくことになる気がします。
それを回避するには、潜在的なアーリーアダプターをいち早く見つけ出し、
育て上げていくことが大切ですし、
育成に対する意識や責任を、メディアが全般的に認識すれば、
状況は変わってくるのでは?と考えています。

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話は変わりますが、私自身「メトロセクシュアルか?」と問われれば答えはイエスです。
都会に住んでおりますし、社会的地位も悪くない程度にはあります。
ファッションには興味はありますし、インテリアの買い物にもセンスを求めます。
アートにしてみても、絵画をはじめ、陶芸、演劇などいろいろと楽しんでいます。
また、仕事上、外部の人間と会った際に不快なイメージに気をつけるために、
定期的に爪を磨きます。肌の手入れは、当然のごとくしています。

しかし私は、「メトロセクシュアル的でありたいか?」と問われれば首を横に振ります。
嫌悪しているわけでも、蔑んでいるわけでもありません。
そのイメージがもたらす恩恵に、何の価値すら感じないからです。

よく「メトロセクシュアル」の根源にある人生観は、
「自分の人生において、常に価値あるものを志す」ことだと言われます。
私もその考え方には賛同しますが、
それを実践するために「メトロセクシュアル的」でなければいけないとは思いません。

「メトロセクシュアル」は、あくまでその類の人種における呼び名であって、
何かの目標を示す道標でもなければ、看板でもありません。
簡単に言えば、その人をカテゴライズするときに、
誰の目から見ても分かりやすくするための“ネームプレート”のようなものなのです。

私の知人にも、メトロセクシュアルであろう嗜好を持った人間は多いです。
しかし、彼らは決まって自分たちがメトロセクシュアル的であるとは自覚していません。
彼らは他の若者たちと同じような習性で、同じように興味を持っています。
そして、全員何らかのヲタクなのです。
何を隠そう、私もコスメヲタクです(キモイという言葉は、聞き飽きました)。
「メトロセクシュアル=ヲタク」というルールを実践しています。

*
最後に。私が、何故今日こんなことを書いたのか、という理由を述べておきましょう。

私は自分のHPでもこのブログでも、コスメについて書いておりますし、
今後もメンズコスメについて書いていくことが多いかと思います。

しかし、昨今の流れから、
「私の書くものがメトロセクシュアルという人種に向けたもの」という誤解を、
早々に予防したかったからなのです。
読者に恵まれているおかげで、ペ-ジビューの数も順調に右肩上がりです。
(読者のみなさま、本当にありがとうございます!)。

私がコスメについてブログやコラムで書くのは、化粧品が好きだからです。
誰に向けて書いているのかと言えば、
彼らも含めた「化粧品に興味のある人々」です。

私が以前仕事で、あるエステティックサロンに訪れたとき、
あなたがたの掲げる「モデル」的な青年も、確かにいました。
しかし、私が目にした多くの客は、
肌や体について何らかのコンプレックスを抱いていて、
それを改善しようと努めている男性たちでした。

それより前に就いていた仕事で、私が化粧品を販売していた頃に接した男性客の多くは、
肌へのコンプレックスに悩みながらも、化粧品のセレクトが巧くできない人たちでした。
「ニキビに悩んでいるし…」と、派手にアクネケアを謳っているコスメを安易に選んだり、
「肌がカサついていて、ボロボロなんだけどどうしよう?」と恥ずかしげに問うてきました。

私から言わせてもらえれば、世間で言う「メトロセクシュアル的男性」より、
彼らのほうが美意識は高いし、メトロセクシュアル的です。

しかし、彼らの多くが、情報の入手が困難であることやさまざまな偏見・先入観の影で、
前進しようにもなかなか前に進めないことも、私は知っています。
だから、私は書くのです。
「キレイになりたい」のではなく、「小ぎれいでありたい」だけ。
ハードルはできるだけ低く、シンプルに情報を届けたいだけなのです。

それは、コスメコラムを書き始めた頃から変わらない考え方です。
このことを誤解の無いように、読者のみなさまにお伝えしたくエントリーしました。

*
本日の雑記は、いささか反論めいた内容になってしまいましたが、
あくまで私は「メトロセクシュアル」を否定はしません。
寧ろ、肯定する部分もあります。
男性女性に限らず、美しくあることは望ましいことだと思いますし、
「メトロセクシュアル」という意識が、「他の人もやってるんだよね…」と、
頑なな男性の心を開いたことも、素晴らしいことだと思います。

しかし、化粧品もファッションも、あくまで自分を高める一アイテムです。
アフィリエイト狙いのビジネスサイトや
女性たちの“王子様主義”に釣られて、彼らの思想に付き合う必要はありません。
「メトロセクシュアル」と呼ばれることの恩恵など、何一つとして無いのですから。

自分自身の好きなものに、一身を捧げて没頭する。
その姿の方が輝いて見えると思いますし、
よほど「メトロセクシュアル」的であると私は思いますよ。

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恐らく、今回のエントリーは賛否両論でしょう。
否、反対意見の方が多いかもしれません。
しかし、美容業界で現場に立っていたことのある人間であるならば、
少なからず、今回のエントリーの趣旨をご理解いただけるかと思います。

もちろん、どなたも「メトロセクシュアル」についての意見を述べることも、
どんなイメージを抱くことも自由です。
なので、私はこう主張いたします。
(皆さま、長文に目を通していただきまして、まことにありがとうございました!)。
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by katefactory | 2005-03-19 17:54 | 雑記